牧場の春(中津川市・ふれあい牧場)
雁渡る
瀬田川の空次つぎと雁渡る 惟之
暁の湖北の目覚め稲の秋
本陣の大きな竈秋深む
小菊咲く大石内蔵助墓前
萩刈つて少し身の辺の整理かな
誌上句会 兼題「冬の虹」
特選
余生なほファンタジックな冬の虹 藤子
名曲のロシアをしのぶ冬の虹 博女
まつすぐな田みち泥みち冬の虹 博光
冬の虹自ずと第九口ずさむ 歌蓮
コロナ禍にやさしい嘘や冬の虹 秀輔
秀句
吉報を帯にはさむや冬の虹 三枝子
夕暮れの過疎の里山冬の虹 祐枝女
人類の行方は如何冬の虹 つとむ
七曲り右に左に冬の虹 洋子
大山を覆いて冬の虹二重 紀久子
雲までは届かず消ふる冬の虹 文夫
七色にひとつ小さき冬の虹 美代子
冬の虹振り向けばもう消えさうな 泰山
アンケート広つぱ用途冬の虹 啓子
父母眠る山に架かるや冬の虹 篤子
遥かなる秩父連山冬の虹 翠
どんな世でも明日への希望冬の虹 三郎
北山に夕暮れ冬の虹淡し 秀子
冬の虹かかる琵琶湖や浮御堂 静子
湖跨ぎ比良にかかりし冬の虹 惟之
冬の虹琵琶湖とあの世つなぎをり 胡蝶
荒海の遠くを跨ぐ冬の虹 信義
幼子に合わせる歩幅冬の虹 陽子
髪を染め老いを受け入る冬の虹 治子
この里が終の住処や冬の虹 敏子
やまびこ(十二月号の作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句
砂浜の砂を均して秋の風 秀子
夢あらば老いのも青春今日の月 廣平
これよりはゆつたり生きむ秋桜 杏花
朝顔に晩年の日日愛ほしむ 東音
雨やんで案山子の顔を拭く農婦 きぬ
米を研ぐ音軽やかに厄日過ぐ 鈴枝
風鈴に誘はれ路地に迷ひ入る 勝彦
山巓の灼くる鎖を握りしめ 勝彦
しみじみとひとりになりし魂迎 爽見
核のなき平和を祈るや終戦日 三枝子
草枕秋の七草諳んずる 怜
揚花火終はり独りと気付きけり 千代
立秋や期限切れたるパスポート そよ女
いづれかの手で秋つかむ千手仏 幸江
沈黙はひとつの返事白芙蓉 小鈴
耳すます無限鯨にも終戦日 京子
空蝉や我に生き抜く刀欲し 里子
青田波千の棚田を駆け登る 咲久子
青葉して千古を今に古墳群 和男
山風に遅れて揺るる秋簾 多喜子
朝凪の大河こぎゆく小舟かな 道子
俳誌 嵯峨野(二月号(通巻619号)より