下鴨神社 8F 水彩
山羊の声
遠山やひまわり畑に山羊の声 惟之
ずぶ濡れで駆け回る子ら散水車
八ヶ岳生もろこしの甘さかな
風そよぐ朝の公園つくつくし
虫の音を聞きつつ妻と夜の散歩
誌上句会 兼題「着ぶくれ」
特選
皇后の列車に旗を着ぶくれて 知恵子
我が終始知っている杖着ぶくれて みどり
語り合う宇宙のロマン着ぶくれて 洋子
語り部の胸のブローチ着ぶくれて 珠子
着ぶくれて宇宙も少し膨らみぬ 秀穂
秀作
ぎこちなき民謡稽古着ぶくれて 加代子
論語読む声明朗と着ぶくれて 博光
八十路なほな学ぶことあり着ぶくれて 翠
着ぶくれに着ぶくれの押す駅ホーム 啓子
着ぶくれて立ち往生の寺詣 胡蝶
カルnうチャーへ来る顔なじみ着ぶくれて 稔
着ぶくれて許す心の芽生えけり 文夫
着ぶくれて窓辺に夜空確かめぬ 博女
何となく両の手遠く着ぶくれて 廣平
恋の過去深く問はれて着ぶくれて 三枝子
着ぶくれて幸せですと老ひ二人 捨弘
ペンギンと向き合うてをり着ぶくれて 京子
ダイアモンド富士見に行かん着ぶくれて 三郎
愛着の服この年も着ぶくれて 万智子
着ぶくれてカムフラージュのクラス会 歌連
大縄を持つ子回す子着ぶくれて 賀代
着ぶくれて着ぶくれて席譲ずらるる 篤子
夜更けまで懐古談義や着ぶくれて 靖子
ふっくらと吉祥天女着ぶくれて 惟之
入選
着ぶくれのマドリョーシシカの羈束かな 治子
着ぶくれてバス待つ列の長き黙 信義
壮健と言わるる晩年着ぶくれて まこと
着ぶくれて振り向くほどの変はりかな 陽子
着ぶくれてバス停までの急ぐ道 紀久子
着ぶくれて日向の道をひとり行く 祐枝女
着ぶくれて世事疎くなり鄙暮らし 泰山
着ぶくれて街にウインドウショッピング 秀子
着ぶくれて時計回りの散歩かな 美智子
着ぶくれて映画の恋に涙せり 和男
着ぶくれの晩年の父まなうらに 藤子
亡き母の着物姿や着ぶくれて 敏子
着ぶくれれの妣の顔して吾なりし 征子
着ぶくれて旅の追憶男鹿岬 靜風
やまびこ(十一月号の作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句
炎天や影は歩幅をはみ出さず 清次
茄子漬の紫紺に染まる小さき幸 杏花
千体の仏の中にゐて涼し 近子
アリスまだ戻れぬ真明易し 布美子
朝まだき山は濡れをりほととぎす 研二
墓洗ふ寺解散を詫びながら 涼子
対岸の雨筋白し半夏生 勝彦
偕老のはるかな日日や夕端居 勝彦
七曜の過ぎる早さや日日草 久子
緑陰に牛の姿で石眠る 隆を
藍染めののれんの匂ひ夏つばめ 布美子
図書館の卓に置きある夏帽子 山女魚
寝入る子の髪にプールのにほひかな 由美
俳誌 嵯峨野 一月号(通巻618号)より