大山崎山荘(京都府乙羽郡大山崎町) F8 水彩
花蜜柑
初夏や鴉のねぐら高高と 惟之
香を放つ密な葉裏に花蜜柑
九輪草誌上句会に手向けらる
蛇の子を小瓶に掲げ餌を問う子
収束を祈り湖岸に大花火
誌上句会 兼題「夜店」
特選
神の灯を借りて夜店の荷を開く みどり
景気見と父に連れられ夜店行く 富治
旅先の南座夜店の焼き団子 啓子
故郷の夜店幼に語り継ぐ 陽子
たなごころ易者にさらす夜店かな 秀穂
秀句
夕映えに陶器投げ売り夜店の灯 ひさ子
蜂の子を食す信濃の夜店かな 美智子
知らぬ世に迷ひ入るやう夜店過ぐ 洋子
気に入りの兵児帯の子ら立つ夜店 珠子
はしゃぐ子の手を握りしめゆく夜店 靖子
姉は買ひ妹迷ふ夜店かな 美樹
腕白の覗くたこ焼き夜店の灯 和男
夜店の灯照らす主の顔の彫り 秀子
セルロイドの玩具ガスの香夜店の灯 喜志子
神木の真下に夜店灯かりかな 篤子
綿飴に昭和の灯る夜店かな 山女魚
山麓の夜店の輪投げ人だかり 惟之
綿菓子を舐めなめのぞく夜店かな 須美子
夜店の灯郷愁誘ふあめ細工 胡蝶
急かされて孫の供する夜店かな 佳子
りんご飴売る夜店にも子ら集ひ 紀久子
綿飴の列にわくわく夜店の灯 加代子
水溜りに中止となりし夜店の灯 洋子
台湾のエネルギー生む夜店街 詔義
八角の香充つ台北の夜店 章代
やまびこ(八月号作品から)感銘・共鳴ーー私のすきな一句
桜湯に花の命の蘇り 啓子
母の倍生きてはは恋ふ桜かな 近子
紙風船吹きて心を膨らます 和子
頬杖のぐらりと崩れ春の雨 睦美
てのひらの落下は風に返しけり 美智子
大空に大声あげて木木芽吹く きぬ
望郷の心果てなし春の山 道子
筍を地の温みごと堀り出しぬ 素岳
老農の日のある限り耕せり 三枝子
父と児のうしろ姿や夕桜 山女魚
久方の遅日のミシン軽きかな 保子
かく小さき花種なれどきっと咲く 邦弘
剥がすたび葉の音やはき春キャベツ 小鈴
初つばめ急流の面をまつしぐら 弘子
椀の蓋開けて木の葉の力かな 隆兵
空の色変はりて春を呼び寄せる 和恵
骨折に苦しんでをり碇草 志津
売られ行く牛春泥を去る たまき
俳誌 嵯峨野 十月号(通巻第591号)より