街道沿いの美山 F6
虎尾草
夕照やカヌー行き交う瀬田の川 惟之
虎尾草を翳して下る近江富士
比良掛かる虹の真下の浮御堂
夏菊の清く波打つ竹林
東屋の屋根赤々と緑さす
誌上句会 兼題「金魚」または「百合」
光庭妻ののこせし百合のかぶ 和巳
紙の網あやうく楽し金魚追う たかすけ
鬼百合の花粉の色や指の先 三枝子
ピンヒールの百合の花化しバイク蹴る 秀子
鍵っ子をばしゃと迎える出目金魚 洋子
山百合や火襷つよき備前焼 みどり
縁日の金魚掬いや兄妹 まこと
目の色を変えて幼や金魚追ふ 捨弘
笹百合の一輪のみの香りかな 由紀子
ひたすらに歩む日課や白き百合 静風
身をよじりほいと蹴破る金魚かな 奏行
平成の齢重ねし金魚鉢 博女
立ち泳ぎしては餌を待つ金魚かな 惟之
部屋中に香りを満たし百合の花 祐枝女
漆黒の壺に白百合無造作に 美枝
精一杯家を守りて百合の花 里子
子供らの金魚掬ひや夜店の灯 テル
幼子や金魚見る目の輝きて 初枝
やまびこ(八月号の作品から) 感銘・共鳴ー私の好きな一句
うぐいすや山峡の空広うせり 靖子
滔滔と北上川や堤焼 東音
妻ありて我が世のありて二輪賞 爽見
しきりなる光のつぶて花の散る みどり
延命を拒みし友と春惜しむ 咲く子
手にすれば握りたくなるよ種袋 靖子
点滴の落ちる遅さよ春の夢 一雀
共に見し人思い出す桜かな 洋子
旅プラン一つ崩れて花は葉に 素岳
挨拶は花のことから始まれり 懋
花りんご母と語りし日日淡し 山女魚
園児らの列伸び縮み花堤 久江
水底のやうに上向く桜樹下 耕
令和てふ手話の定まる四月かな 秀穂
俳誌 嵯峨野 十月号(通巻第579号)より