楽聖 水彩 6F
夕 焼
夕焼へ尻取りをして母子ゆく 惟之
炎帝や地球沸騰はじまりぬ
繙けば吉祥天や秋涼し
核なき世果たせ果たせとつくつくし
半世紀ぶりの再会星祭
誌上句会 兼題「彼岸花」
特選
彼岸花ほそぼそ記す農日記 みどり
彼岸花心つもりを子に話す 珠子
今日少し夫に会ひたや彼岸花 京子
彼岸花父母耕しの畦の道 東音
師の句碑に師の師の句碑に彼岸花 清治
子や孫と登る棚田や彼岸花 博光
彼岸花咲いて寂しさ増す野道 桂子
彼岸花かたまり咲くも淋しかり 靜風
五重の塔真向かひにあり彼岸花 紀久子
秩父路の同行二人彼岸花 翠
庭隅にすつと一本彼岸花 鈴子
祖も親も一つ屋に居て彼岸花 泰山
僧房の道は坂道彼岸花 文夫
永らへて今年も出会ふ彼岸花 靖子
檀家寺の入口に生ふ彼岸花 つとむ
曼殊沙華夫と歩調を合わせけり 安恵
彼岸花百年の恋焼き尽くし 治子
沿線の先の先まで彼岸花 光央
燃えて火の色褪せ空し彼岸花 三枝子
手を繋ぐ姉妹の下校彼岸花 知恵子
入選
古民家の裏庭白き曼殊沙華 洋子
句碑面磨かれ映る彼岸花 啓子
曼殊沙華咲くやお春の古刹訪ふ 藤子
畦沿ひの赤き炎や曼殊沙華 まこと
彼岸花開花待たれる昨日今日 祐枝女
河川敷一面占める彼岸花 信義
幼き日彼岸花避けて遠回り 敏子
陽を受けてティアラの如し曼殊沙華 秀輔
赤よりも白が目をひく彼岸花 美代子
彼岸花魔性の赤を愛しめる 廣平
彼岸花田圃アートの片隅に 洋子
彼岸花けふはあがらむ石仏 謙治
ふるさとをわすれぬ畦の彼岸花 秀子
赤赤と畑の守護神曼殊沙華 惟之
八十年在所の寺に彼岸花 稔
泣かないでと言ひつつ飾る彼岸花 博女
やまびこ(十月号の作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句
月下美人月の色してひらきゐる きぬ
あるがまま生きるは難し濃あぢさゐ 梅子
俎板の音にも夏の来てをりぬ 千代
羽虫すら潰せぬ指よ沖縄忌 佳代
ががんぼや系図に探す我が名前 勝彦
打水の呼ぶ水の風風の神 爽見
薫風を待たせて潜る躙り口 方城
水郷は雨こそよけれ濃紫陽花 みどり
句に学ぶ余生でありぬ蝸牛 みどり
六月の富士海の上雲の中 清次
水無月の有りと老舗や梅雨晴間 啓子
草を取る庭に奥行もどりけり 翠
山里の暮色のけぶる合歓の花 朋子
それぞれに生きて集ひし盆踊 たまき
俳誌嵯峨野 十二月号(通巻第629号)より