三栖閘門の春(京都・宇治) 水彩 F8
浮寝鳥
朴落葉に目と口あけてムンクかな 惟之
神農の虎のゐ並ぶ飾り棚
障子貼る子らの声聞くラインかな
冬の空ドーハの歓喜また涙
緩やかな洗堰なり浮寝鳥
誌上句会 兼題「水仙」
特選
水仙や戦火の野にも負けず咲け つとむ
水仙やこの手を借りる事ふえて 三枝子
一輪の水仙の香に一人かな 靖子
水仙の海の明るさ活けにけり まこと
出港の汽笛は三度水仙花 惟之
父の忌や供花はいつも水仙花 秀子
水仙や山の朝日の恣 治子
手を添えて切る水仙の匂ひけり 廣平
水仙の横たわりくるふるさと便 珠子
秀作
水仙花弁天池の小さき島 恵子
玄関灯消せば水仙濃く匂ふ 清次
水仙の真白き蕾はじけをり 東音
水仙花しづくの一つ光をり 信義
夕さりの日は水仙に残りけり 博光
水仙を抱きて友への土産とす 紀久子
風つれてうさぎの島や野水仙 京子
水仙の香る古刹の上り坂 博女
客を待つ壺に水仙溢れさせ 洋子
子等去りて水仙匂ひはじめけり 美智子
咲かす水仙よろこぶ人が側にゐる 稔
野にあらば野の風受けて水仙花 みどり
やまびこ(一月号の作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句
ふるさとへ各駅停車花すすき 東音
白菊を活けて微かな風を知り みどり
余生とは今生きること大花野 京子
山からの風の乗せくる秋の声 きぬ
路地裏に背をさがす秋の暮 あや子
十三夜たれもとほらぬ道に佇む 洋子
縄文の音かも知れず瓢の音 隆を
レクエイム聴けばちちろも鳴きやまず 怜
ビル群へどかと居座る残暑かな 方城
ままごとの母役は姉秋夕焼 布美子
四方の風受けてあしらふ芒原 柱子
贅沢は七輪で焼く新秋刀魚 孝一郎
てのひらにとぼるる光今年米 多喜子
木守柿空に孤高の風そよぐ 裕司
俳誌嵯峨野 四月号(通巻621号)より