睡蓮(大津市大萱) 40号水彩
春寒し
一月を破り火山の大爆発 惟之
凍空や山売りますと貼り紙あり
春立ちて早や三日目に金メダル
大ジャンプ消えたるメダル春寒し
早春や阿修羅てふ名のチワワ抱く
誌上句会 兼題「春の波」
特選
敷き網の浮子を超えくる春の波 三枝子
釣り人を眠りに誘ふ春の波 須美子
網つむぐ島の漁師や春の波 惟之
羊水のやう春の波安らぎぬ 恵子
殉教の孤島しづもる春の波 藤子
秀作
橋多き水の都や春の波 捨弘
宿下駄の爪先ぬるる春の波 珠子
春の波ただよふ棒の戻りけり 文夫
力瘤隠し寄せ来る春の波 廣平
鳥声の裕ちゃん灯台春の波 京子
近江路にひとあし早き春の波 静風
春の波湖南の岸辺洗ひけり 博女
糸垂らす小舟に近江春の波 秀子
比良よりの風穏やかに春の波 洋子
春の波渚に光ちりばめて 靖子
春の波高輪築堤残したや 翠
中世の要塞くづれ春の波 久代
深海の色崩れゆく春の波 洋子
予後の身の母に寄り添ふ春の波 咲久子
ひたひたと須崎入江に春の波 啓子
渡し待つ浮桟橋や春の波 鈴子
侞羅の香に雅楽の舞や春の波 陽子
江の島のヨットハーバー春の波 ともはる
鎮魂の沖にたゆたふ春の波 和男
春の波大岩叩き超へゆけり 信義
入選
春波や水脈ながながと島渡船 篤子
瀬戸内の入江静かに春の波 万智子
暮れさうで暮れぬ夕暮れ春の波 胡蝶
晩学や絶えず沖より春の波 秀穂
音といふ音みな呑みて春の波 みどり
宮島の大鳥居かな春の波 知恵子
春の波蹴って飛び立つかもめかな 紀久子
春の海貝の息穴残し引く 稔
灯台の螺旋階段春の波 美代子
突堤に思ひの丈を春怒涛 まこと
満水のダム湖きらきら春の波 泰山
頬杖の耳奪いゆく春の波 博光
鎮魂の鐘の音風に春の波 洋子
選択の我が人生や春の波 三郎
瀬戸内の海はおだやか春の波 裕枝女
沿線の春の川波きらめけり 敏子
春の波川上りきて消えにけり 詔義
やまびこ(四月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句
かたくなになってはゐぬか花八つ手 爽風
冬ざれや五百羅漢の黙五百 勝彦
大根煮て余生楽しむ心持 久子
生きて居ることが仕事よ日向ぼこ 千代
願い箏ひとつを胸に年惜しむ きぬ
失ひしものの重みや古日記 鈴枝
煮凝やむかし昔の母の味 隆を
十五歳墓碑にやさしき冬日かな 近子
ちゃんちゃんこ母の匂ひとぬくもりと 節子
大空へ杵たかだかと餅を搗く 惟之
合鍵を大家に戻し晦日そば 順子
冬ざれの野に一条の光あり 佳子
俳誌嵯峨野 六月号(通巻611号)より