新緑の県立図書館 6F 水彩
初比叡
子らと抜く庭の大根一二三 惟之
八十路へと向かふ湖辺や初比叡
初春や子らと張子の虎づくり
初旅は京の御朱印巡りとや
高高と子らと凧揚げ里の川
誌上句会 兼題「草青む・水温む」
兼題「草青む」
特選
比叡より流れ来る川草青む 胡蝶
胎内の蹴り初めに触れ草青む 秀穂
東京湾へ八里の岸辺草青む 啓子
秀作
佐保川の土手をスキップ草青む 洋子
残照の信玄堤草青む 翠
先陣の牛の放牧草青む 三郎
畝浅き岨の畑や草青む 美智子
城址へゆるき階段草青む 洋子
伴走の絆の輪っか草青む 珠子
牛を追ふ手綱の張りや草青む 三枝子
草青む刈込済みの野川沿ひ 陽子
小禽の声の合はずや草青む 秀子
制服のサイズ合はせや草青む 文夫
校名の消されし柱草青む 廣平
草青む土手や口つく童歌 恵子
ワガハイの供養塔にも草青む 久代
入選
ころころと黒猫畦に草青む みどり
読み返す妣の手紙や草青む 里子
縄電車の運転園児草青む 泰山
草青む頃なり母の逝きし日は まこと
草青む若き夫婦のペアルック 静風
古屋根の隙間の草の青みどり 敏子
草青む狭庭の路地も野も山も 捨弘
草青む水面を白き鳥一羽 信儀
草青む子らとじゃんけんあひこでしょ 惟之
前向きに生きよと草の萌え出づる 靖子
草青む我ら餓死線越えし裔 治子
兼題「水温む」
特選
麒麟像見守る街や水温む 鈴子
水温むわけても木橋あたりより 篤子
秀作
水温む包丁買ひに町にでる 京子
楽の音に癒るる心や水温む 博女
農小屋に集ふ漢や水温む 秀子
奥吉備の水車に水の温みたる みどり
鯉遊ぶ津和野の掘や水温む 知恵子
初めてのベビー靴の子水温む 美代子
水温む笊にあきなり雑魚の嵩 雄彦
入選
溜池に走る魚影や水温む 里子
釣り掘に並ぶ親子や水温む 咲久子
水温む秩父札所の心宇池 和男
河川敷に群がる雀水温む 洋子
用水路に数増す鯉や水温む 万智子
島影は五指にも満たず水温む 稔
水温む小魚群るる街の川 紀久子
水温み別れの刻の近づきぬ 須美子
野の池に映る草影水温む 祐枝女
ざぶざぶに朝の洗顔水温む 加代子
やまびこ(三月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句
祈るとは今生きること秋終る 杏花
大熊手見上ぐる人を分けゆきぬ 勝彦
声明の揃ふ静かさ十夜寺 勢津子
行く秋や流れのごとく年重ね 紀久子
湧き水の砂の踊りや小六月 耕
小夜時雨写真の母の聞き上手 玉枝
オルガンに触るるふるさと小六月 久子
化野の石は仏や初時雨 怜
生かされて生きて傘寿の柚子湯かな 憲勝
慈しみ畳む留袖冬隣 洋子
木の実降る林の中の欠け仏 久江
金継ぎに思ひで継ぎて石蕗の花 啓子
秋夕焼色褪せるまで歩きたし 泰子
俳誌嵯峨野 五月号(通巻第610号)より