パンと赤いネクタリン F8 水彩
光悦寺
鷹峯三山空へ秋晴るる 惟之
椿の実三つ四つ光る光悦寺
光悦の墓前に立てば秋の風
黙浴の露天の静寂月明り
父と子の語る立湯や零れ萩
誌上句会 兼題「冬木立」
特選
裏山の口開いてをり冬木立 清次
青空の余白を広げ冬木立 篤子
胸襟を開き切つたる冬木立 廣平
梢越し海の真青や冬木立 三枝子
寒林と競うマンション多摩の空 洋子
秀作
枝先に星鏤めて冬木立 洋子
根元まで日の暖かし冬木立 まこと
乾きたる風が過ぎゆく冬木立 みどり
山の端の夕日透かして冬木立 東音
熊除けの鈴鳴るしじま冬木立 恵子
石を割る発破の音や冬木立 紀久子
うとうとと日のぬくもりの冬木立 鈴子
要らぬものすべて捨てきり冬木立 文夫
無骨なる生きざま晒す冬木立 泰山
黒黒と鷺の空き巣や冬木立 秀輔
やまびこ(一二月号作品から)感銘・共鳴)ーー私の好きな一句
老いるとは知恵を積むこと竹の春 杏花
立秋やどこへも行かぬ紅をさす 優子
かなかなの息ととのへる間合かな 勝彦
終戦日空の青さをくちぐちに 憲勝
初めての句会へ秋の橋渡る けいこ
窓といふ窓の緑や夏館 洋子
牧牛の賢者の目して炎天下 圧知
胡瓜一本買ふに目利きの所作をして 隆を
トルソーが廊下の端に広島忌 怜
鰡飛ぶや夕陽の沈む日本海 ともはる
秋蝉の声透きとほる夕並木 洋子
朝顔のバックネットを越ゆる意気 山女魚
三線と波音だけの星月夜 そよ女
桐一葉逝く時はゆく命かな 富治
夕焼やひと日一度師を思ひ 朱實
身に入むやリモートで会ふ母の顔 隆子
割りばしのいびつに割るる暑さかな 美代子
俳誌嵯峨野 二月号(通巻第607号)より