赤い四阿の見える森(栗東) 8号水彩
浮御堂
山稜に垂るる暗雲雹来襲 惟之
雹はげし茄子の葉っぱの穴あまた
捩花や左右を妻と確かめて
首筋を真だに遣らる夏の山
湖に立つ虹の真下の浮御堂
誌上句会 兼題「花野」
特選
潮鳴りの花野の中の無人駅 清次
空缶を蹴りゆくどこまでも花野 みどり
日照り雨して花野に風の戻りけり 洋子
きららなす雨滴の走る花野かな 東音
この先は港へつづく花野道 祐枝女
秀作
夕花野座して無心となりにけり 三枝子
妖精に出合へる予感花野原 恵子
花野道入相の鐘はるかより 静風
ワクチンをすませて広き花野かな 博女
花野にて振り返らずに別離しが 稔
われに返る花野の中を汽車の音 洋子
文庫本二冊をかかえ大花野 洋子
光り飛ぶ種袖に付く花野かな 鈴子
朝の日にきらめく吉備の花野かな 京子
花野また広くなりゆく休耕地 文夫
やまびこ(九月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句
緑蔭や編集長の佳き句集 優子
ゆく道はかへる道なり二重虹 裕司
みどり児の忙しき手足聖五月 勝彦
大いなる春満月に託し事 久子
もう登る事なき山の山開き 篤子
恋猫の口説かれてゐる屋根の上 方城
亡夫の服いまだ捨てずに春終る 杏花
夏あざみ手折り野の風連れ帰る きぬ
祭足袋塩で浄めて仕舞けり きぬ
トラックに満載の牛花曇 爽見
軒深き宿場を行き来夕燕 久江
浅き夢いくつ重ねて明易し 富治
青春に触れた気のして桜貝 睦美
若葉山バイク時時パトカー来 恒子
マイペース貫く勇気蝸牛 桂子
百歳の顔は履歴書濃あじさい 信義
天井に風船預け子の眠る 泰山
俳誌嵯峨野 十一月(通巻604号)より