明智越え(京都市亀岡) 50号 水彩
冬うらら
今庄の卯建卯建よ柿たわわ 惟之
冬うらら駅のベンチに座すゴジラ
冬至風呂子らと遊んだ浮寝かな
蜜避けて煤払いなり御影堂
花八つ手朝日に映えて八十路へと
誌上句会 兼題「野焼」
特選
翔けるもの追ふかに野火が挙がりけり 稔
田の神へ畑の神へ野火一柱 清次
野焼あとどこか芽の出る音がして 静風
野を焼ける抜きさしならぬ炎のあがり 三枝子
蒲生野の野焼が覆ふ比良比叡 惟之
秀作
縄文の石の遺構や野火赤し 恵子
遠巻きの子ら躁がせて野火猛る 洋子
松明をかざす村長野焼煤 京子
風なくば風をたたせて野火走る 篤子
故郷は箱根の麓野火走る 佳子
てらてらと頬なめ過ぐる野焼風 まこと
境界に仁王立ちして野火守る 和男
遠野火の焔に追われたる鴉かな みどり
根こそぎはせず火の走る阿蘇野焼 啓子
野焼して空の広さのどこまでも 紀久子
やまびこ(二月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句
老いて尚習ふ日日あり鶏頭花 惠弘
大役を終へし案山子のすまし顔 テル
秋深しシチューをぷくりぷくり煮る 遼子
夕暮れの静寂まとひ曼殊沙華 爽恵
咲きつくし命傾く秋の薔薇 治子
小春日や古びし法衣つくろひぬ 惠弘
山の日の行きつく所ななかまど 道子
廃校の校歌を歌ふ秋思かな 淑子
引き直すスタートライン秋澄めり 布美子
名月や母屋へつづく石畳 鈴子
麦とろや柱に志士の刀疵 謙三
俳誌 嵯峨野 四月号 (通巻597号より)