若木山(わかぎたかし) 安房ノ海処女(おとめ) 1951年
(紙・着彩 二曲一双 180×176㎝ 千葉県立美術館蔵)
風光明媚で漁業が盛んな千葉県の房総半島には、江戸時代以来、多くの絵師や画家が訪れて漁村の様子を描いた。自然に抱かれたおおらかな人間の生活にあこがれた日本画家の若木山(1912~72年)もその一人だった。1950年代初め、房総半島南部の安房地方で描いた「安房ノ海処女」の3人の海女は、水中メガネを着け、海に潜る準備を整えている。
1609年、この田尻海岸沖で、スペイン船サンフランシスコ号が、メキシコに向かう途中、嵐の中で座礁、付近の住民、特に海女たちが乗務員救助に活躍した。現場近くの説明板には、乗組員373人のうち317人が救助されたことや、「海女たちは、飢えと寒さ不安にふるえる異国の遭難者たちを、素肌で暖め蘇生させた」と言い伝えを記す。(2021年3月7日、読売新聞みほっと より)
沖を見る安房の海女の立姿 惟之
国境を越えた隣人愛の海女