神戸ドック F6水彩
リラの花
春キャベツ畑に列なし遠伊吹 惟之
鞍馬山またまた出会ふ蝮草
花冷やパンデミックなる言葉
句会なき空へ香りを放つリラ
おさがりを着てゐる幼リラの花
誌上句会 兼題「夏野」
特選
草花の名に釣られゆく夏野かな ひさ子
気ままなる又三郎の風夏野 恵子
野辺山に憩ひし軍馬夏野原 翠
ひよつこりと野武士出さうな夏野かな 円町
少年の夏野の中の秘密基地 捨弘
秀作
寝転べば地球の回る夏野かな 富治
指切りの少女かけ出す夏野かな みどり
一本の道おれてゐる夏野かな 勝彦
合宿の夏野の先は富士裾野 仙命
大夏野姉は一世を里暮らし 珠子
岬馬の親子くつろぐ夏野かな 基雲
夏野来てカウベルの音のすがすがし 篤子
帰省路の鉄路まぶしき夏野かな 稔
五月野や鳥の親子の口移し 美樹
夏野来て花の名を知る一日かな 万智子
誰がつけし夏野に細き隠れ道 啓子
靄流れ池塘の浮かぶ夏野かな 喜志子
牧牛の乳房豊かや大夏野 三枝子
木道の果て人と会ふ夏野かな 山女魚
朝風や夏野の先の青き海 京子
名の知らぬ花を摘み摘みゆく夏野 靖子
レストランの窓に開ける大夏野 和男
久方の孫と半日夏野ゆく 保子
夏野原かきねは今も駆けてをり 研二
鈴の音の仔馬の列や夏野道 須美子
やまびこ(六月号の作品から)感銘・共鳴ー私の好きな一句
取りこはす生家に春の日淡く 優江
如月の風やひとりを生きてゆく 洋子
幼子の片言ふえて雛あられ まり
喪帰りや乗らふらここひとゆすり 慶子
豆撒やもしや最後の年男 龍策
祈願する子らにさきがけ梅ひらく 靖子
夕東風や明治を今に根津谷中 東音
春めくや白き煙の登り窯 喜志子
故郷はほどよきところ無し梅二月 道子
絹の道遥か来し眼の春の鹿 怜
父の忌や父の鍬もて耕せり 怜
野梅咲き山に二の沢三の沢 みどり
一滴の墨のひろがり寒の明 布美子
春近し歩道にひびくハイヒール 利里子
日に透けて松葉しとねに節分草 啓子
野にあれば野の色映すシャボン玉 隆子
うぐいすや懐紙に残る薄緑 美幸
陽をこぼす今日から春の雲となり 龍策
鳩が飛び雀が飛んで春の空 志津
病室の窓いっぱいに春の雨 志津
水の面にさまよふ影やねこ柳 きぬ
薄氷や夕陽をのせてしばらくを 爽見
地酒酌み近江に焼し初諸子 素岳
軽き嘘の一つや二つ蕪汁 隆を
俳誌 嵯峨野 八月号(通巻第589巻)より