新緑の八幡堀 8号 水彩
菜の花
眼の優しセラピー犬やミモザ咲く 惟之
蛤の砂を吐かせば出ず稚蟹
春場所の八艘飛びや無観客
石山の即位吉礼ご開帳
菜の花やドクターイエロー疾走す
誌上句会 兼題「蝶」
特選
菜の花のちぎれた黄蝶生まれけり まこと
黄蝶ゆく小野妹子の古墳径 惟之
蝶蝶や眼下に空母ワシントン 富治
初蝶や姉とハモりしわらべ歌 靖子
雨あめの烏城の凜と紋白蝶 京子
秀句
木道は風湧くところ蝶の昼 篤子
光明をまとひ初蝶舞ひ来たり 洋子
平和なる空を自在に蝶の舞 博女
蝶の飛ぶ光の中の柿田川 珠子
白蝶の飛び立つ風や空青し 克彦
浅間晴れ野川に蝶を追ふ日かな 山女魚
紋白蝶五浦の海の碧の上 章代
風と来て風と去り行くしじみ蝶 三枝子
初蝶やビロード並ぶ異人館 京子
まなかひを舞つて初蝶森影へ 祐枝女
初蝶や空の青さに見失ふ 和男
生まれし蝶柔らかき翅もて庭立ちぬ 喜志子
初蝶やきのふと違ふ空の色 美樹
摩崖仏蝶もつれては放れては 紀久子
蝶追つて不思議の国を尋ねんか 洋子
心待ちゐる初蝶や昼下がり 陽子
病身と思へぬ夫や畑の蝶 里子
指先に蝶の残像描きとめん 啓子
初蝶来田淵行男の蝶ヶ岳 秀穂
なだらかと言えど崖なり蝶の昼 ひさ子
やまびこ(五月号作品から)感銘・共鳴ーーー私の好きな一句
嫁の名の箸紙一つ増えにけり 勝彦
縫初や針はひかり掬ひをり ひさ女
余罪ありさうな貌して寒鴉 素岳
戦争を知りたる人の逝く寒さ 爽見
振り出しに戻れるものに絵双六 方城
末吉もあなた次第と初みくじ 布美子
さりげなく癌と言われて冬の薔薇 志津
見綺麗に生きたく思ふ寒つばき 梅子
初暦繰る晩節をといふ未来 篤子
さつきからきてと言ふだけ炬燵守 方城
雑炊を馳走と思ふ世の平和 敦子
膝に来て嬰の瞳の御慶かな そよ女
八十路には八十路の力鍬始 節子
年賀状五十回もの会ひたいね 史子
初風呂に心の皺を伸ばしをり 美幸
読初や汀女句集のセピア色 惠
俳誌 嵯峨野 七月号(通巻第588号)より