赤いプラムとパン F6 水彩 2010年
ゆりかもめ
飛行雲にのってサンタは還るとや 惟之
年の瀬や似顔掲げて歌ふ第九
巫女の舞ふ里の神楽や笛鼓
出港のデッキに群れるゆりかもめ
雪囲終へて昇りぬ湯のけむり
誌上句会 兼題「湯ざめ」
特選
吾子とゐて宇宙を語る湯ざめかな 三枝子
あと一句封するまでの湯ざめかな 富治
耳掻くや湯ざめの膝に子をのせて ひさ子
透きとほる波を見てゐる湯ざめかな 勝彦
湯ざめして見えぬ会話の長電話 秀子
秀句
時忘れくくる名簿や湯ざめして 博女
推敲の決まらぬ座五や湯ざめして 研二
笑ひ声湯ざめを知らぬ孫子らや 美樹
釘付けの逃亡ニュース湯ざめして 万智子
湯ざめして今日振り返るボールペン 珠子
星の下語り明かして湯ざめかな 胡蝶
黙し読む子の絵日記や湯ざめして みどり
十時打つ柱時計や湯ざめして 紀久子
迷路なる宿の廊下や湯ざめして 章代
湯ざめして話も尽きず里帰り 加代子
スターウォーズごっこに湯ざめ童どち 惟之
久に逢ふ友と旅寝の湯ざめかな 篤子
風音や湯ざめ案ずる夫は亡く 保子
島の湯の星降る中の湯ざめかな 京子
湯ざめして母の形見を羽織りけり 佳子
町の灯のゆらぐ川面や湯ざめして 洋子
湯ざめしてやうやくマウスオフにせり 秀穂
新聞を深く読みゆく湯ざめかな 洋子
メール受け湯冷めの覚悟の空見上ぐ 啓子
湯ざめして推理小説終はりまで 信義
やまびこ(二月号作新から)感銘・共鳴ー私の好きな一句
去り難き夕日の花野老ゆるとは 東音
尼寺の仏小さし貴船菊 素岳
ざわめいてゐそうで靜か芒原 喜美恵
秋扇ひざにたたみて通夜の席 きぬ
ねこじゃし雨はいやよと首をふる きぬ
杉箸に残る柚味噌の香りかな 勝彦
郷の秋語り尽くせぬ父母のこと 勢津子
湖底へとつづく村道鳥渡る 篤子
ひとつづつ音を違へて木の実ふる みどり
杉玉の揺るる酒蔵秋澄めり 紀久子
夫の臥す窓辺も照らせ眉の月 洋子
ギター持つ案山子を囃す雀どち 良精
棚田いま突つと火を噴く曼殊沙華 邦弘
仲直りするか住まいか赤のまま 朋子
温め酒老ひの正論孤立せり 廣平
白糸の滝音さやに秋の声 龍策
虫の音や父の人生語るとき 鈴枝
鶏頭の頭小突いて下校の子 素岳
雨戸繰る音にも毀れ金木犀 洋子
草虱まみれ幼のかくれんぼ 久江
コスモスや一人暮らしも少し馴れ 敏子
古希と喜寿二人で祝ふ茸飯 惟之
秋の歩や地図と磁石と万歩計 捨弘
台詞なき菊人形の主人公 廣平
俳誌嵯峨野 四月号(通巻第585号)より