英国庭園(大津市)
稲荷山
鳶舞うて大河合流初御空 惟之
赤赤と千本鳥居の淑気かな
五福餅食べて家族と稲荷山
逆光の冬日波打つ湖辺かな
次次に来ては湖に向くゆりかもめ
誌上句会 兼題「海苔」または「春浅し」
春浅し魚拓の墨の匂ひゐて 三枝子
春浅き海辺に立ちて空仰ぐ 優
海苔焙る香りに食のすすみけり たかすけ
児の声や海苔で包みし握り飯 初枝
入園のグッズ作りや春浅し 惟之
百度踏む父と少女や春浅し 洋子
焼海苔に海の香青し朝の膳 まこと
春浅し鉢植えの向き変えにけり よう子
地海苔とて高値をつけて恵方巻 稔
春浅し孫の成績気にかかり テル
春浅し売地に杭の打たれゐて 祐枝女
店先に猫の座布団春浅し 美智子
春浅しされど賑はふ京の街 博女
磯波にさはぐ光や春浅し 靖子
さざ波に鳰の湖春浅し 静風
草原の茫洋として春浅し 珠子
春浅し歌手願望の絵馬揺れて 美枝
海苔炙る酢飯のできる頃合ひに 秀子
メールにて返す返事や春浅し 十二朗
春浅きマラソンランナー古都駆けて 泰行
海苔炙りついと校歌に海苔魚目 啓子
無造作に干さし海苔や道の横 捨弘
海苔味の赤穂の塩や梅真白 ひさ子
やまびこ(三月号の作品から)感銘・共鳴―私の好きな一句
この人と老いゆく幸や落葉踏む 鈴枝
音立てて足踏みミシン窓小春 ひさ子
オリオンを見上げ勇気の塾帰り 緋莉
冬の朝箸置くやうに母逝きぬ 怜
ひとつづつ風の甘さの吊るし柿 静風
出仕舞の煙残して村眠る きぬ
内子座の奈良の冷えへ下りにけり 勝彦
木漏れ日を縫ひつつゆけり冬の蟻 勢津子
本音出る寄せ鍋の貝ぱつと開く 素岳
鳴きながら家の真上を鶴の行く 志津
冬紅葉逢えぬ人またひとり増え 東音
なにげない母の一言榾明り 勢津子
担がれて案山子の役も了りけり みどり
包丁も逃げる蒟蒻冬真近 繁子
どの家も苦楽こもごも十二月 悦子
吾亦紅何処か気の合う干支同士 アイ子
柿落葉肩を抱き合ふ道祖神 信義
俳誌 嵯峨野 五月号より(通巻574号)