鼓と花 6号 水彩
淀川浪漫紀行
街道は京へ京へと天高し 惟之
秋晴れや幟はためく船着場
行く秋や鍵屋の古りし吊り太鼓
くぐりゆく毛馬閘門の秋信号
船着場釣瓶落しの八軒家
誌上句会 兼題「冬将軍」または「退屈」(無季語)
退屈に炬燵の睡魔襲ひ来る 三枝子
退屈を極めつくせず年の暮 まこと
退屈とは如何なることか十二月 洋子
小春日や退屈の僧碁敵来る 秀子
冬将軍しかと眉描き街に出る 美樹
雲迅し冬将軍の峰みねに みどり
冬将軍待ってましたとスキー場 祐枝女
荒行の僧の道行く冬将軍 静風
冬将軍鎧兜も脱ぎ捨てて 博女
冬将軍猫が我が道行く如く 繁子
冬将軍雑木の中に昼の月 千代
冬将軍異国の山に寝てゐるか 古奈
冬将軍佐渡を踏んづけ日の本へ 研二
冬将軍靴音急ぎ通り過ぐ 初枝
冬将軍朝刊ぽとり入る音 美枝
冬将軍窓に張り付く湯治宿 恵子
冬将軍来るなら来てみよ逃げはせぬ 捨弘
聳え立つ摩崖を覆う冬将軍 惟之
掘端のガス灯どっかと冬将軍 啓子
退屈や木枯の声聞くばかり 朱實
やまびこ(一月号の作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句
茨の実恥ぢらひほどに彩づけり 喜志子
文机に柿あれば足る子規忌かな 爽見
鰯雲川の消し去る独り言 繁子
声尽くし命つくして夜夜の虫 玲子
見舞文切手を選ぶ夜長かな ともはる
糸瓜忌やひとり足らざる草野球 素岳
秋涼しペンの先より句が生まれ 近子
病棟に一灯残る夜の長き みどり
秋霖や座敷童の気配して 洋子
稲妻に浮かぶ高炉の巨影かな 良精
肩すこしふれて離れて夕月夜 幸江
ラムネ飲む昭和の音を転がして 喜美恵
老人になり切れぬまま初さんま 久美子
唐辛子魔女の爪にも劣らざる 素岳
柚子一つ捥いで今宵も一人鍋 保子
校庭の蛇口上向く運動会 幸子
鳴き継ぎて千古の宮の法師蝉 惟之
お話を聞きて寝る子や星月夜 文香
今年米地震に遭し子のもとへ 照子
敬老日靴紐ぎゆつとむすびをり ひさ女
俳誌 嵯峨野 三月号(通巻第572号)より