百日草 10号(水彩) 中村修三
錦鯉
手を繫ぎ渡る渓流夏に入る 惟之
錦鯉跳ねる近江の商家町
片蔭や船板塀の釘の跡
飛び跳ねて魚道をのぼる小鮎かな
聖五月美女と野獣を見る二人
誌上句会 兼題「風鈴」
懐かしきほおづき市の風鈴音 惟之
風鈴に眠りの国へ誘はるる 洋子
遠き日や表を通る風鈴屋 初枝
天秤の売り込む声の風鈴屋 幸子
風鈴の舌の気ままや風まかせ 秀子
風鈴や坊やすやすや夢の中 テル
風鈴の時時鳴れば耳に優し 捨弘
やまびこ(7月号作品から)感銘・共鳴ー私の好きな一句
沈丁花小さき石は猫の墓 きみ
ふれあひてひがなおしゃべりこごめばな 篤子
春風を乗せて母子の縄電車 永治
おふくろの彼岸のおはぎ忘れえず 龍策
のどけきやいまさら気張ることもなく 恵弘
柳芽に地球の軽さ計りをり 東音
遠く住むも詫びの一つや彼岸寺 東音
真筆の美しき行間利休の忌 爽見
百畳の千のひひなの吐息かな ひさ子
道端の子猫を囲むランドセル 久子
芹採りの水の匂を持ち帰る 隆を
桃の日や妣思ふとき子に帰る 方城
三萬日生きてお濠の朝桜 珠子
犬ふぐり言葉飾らぬ子の話 繁子
病む人を笑はせに行く春日和 芳子
水に浮く河馬の目ふたつ花筏 幸江
紅椿落ちてくれなゐなほ深し 敏子
俳誌 嵯峨野(通巻第554号)より