朝日に照らされた草の花房。紫いろの鯉が群れて泳いでいるよう。大戸川川原にて。
山襞を昇る法螺の音春の雨 惟之
屋根替や路地に捨てらる鬼瓦
春の日に初めて乗りぬ三輪車
啓蟄やつはりの母を気遣ふ児
点滴を待つ間の雛コンサート
水槽が晴れ舞台なり熱帯魚 捨弘
熱帯魚患者迎へる医師の棚 美枝
熱帯魚恋するごとく向かひ合ひ 惟之
水槽を堂々巡り熱帯魚 幸子
待合室しずかに恋の熱帯魚 アイ子
水槽の中は穏やか熱帯魚 テル
大海を知る術もなく熱帯魚 洋子
遠き日の吾子の瞳や熱帯魚 初子
熱帯魚夢見は未だ外つ国 秀子
俳誌 嵯峨野 七月号 45周年記念特集号(第540号)