雲厚く春風頬を突き差しぬ(大津港)
楓の木の紅葉且つ散る鏡池 惟之
焼芋の煙いぶりて坂のぼる
初冠雪やうやく見せて比良遠見
ふぐ鍋を囲みて明日の釣談義
店先に棒鱈吊るし客を呼ぶ
シクラメン真中を占めて生花店 捨弘
シクラメン一人出窓に定まりて 幸子
多種あるも炎のやうなシクラメン アイ子
シクラメン葉陰に蕾五つ六つ 惟之
会釈して駆けだす少年シクラメン 美枝
店先に鉢植ゑ並ぶシクラメン テル
シクラメン日差し移らふ飾り窓 洋子
口ずさみ一句授かるシクラメン 初枝
シクラメンあれは二十歳の誕生日 秀子
俳誌 嵯峨野 四月号(通巻第537号)より