赤いドック(姫路市家島)50号 水彩
やどかり
春場所の記録記録や尊富士 惟之
やどかりや子の掌に貌を出す
高瀬川の一之船入桜咲く
焼跡の輪島に咲きぬヒヤシンス
花見どきお召列車の菊御紋
誌上句会 兼題「初夏」
特選
初夏の辻馬車に揺れ豊後富士 惟之
初夏のひかりを廻す風車かな 利里子
二〇度は丁度頃合ひ老ひの初夏 秀子
初夏や逗子の沖行く帆掛け船 克彦
秀逸
初夏の芝に稚児の転がされ 洋子
初夏や天地返しに味噌の玉 三枝子
初夏の風の吹き交ふ古戦場 幹男
四阿を筒抜け風夏はじめ 珠子
初夏や流るる雲も大川も 東音
初夏の朝出かける誘ひ待つてをり 万智子
入選
リハビリへ窓辺のエール初夏の風 謙治
山寺の足もと軽し初夏の声 博女
指しやぶる赤子に初夏の風やさし 廣平
アレクサにまずは挨拶初夏の旅 光央
苗を待つ田水を揺らす初夏の風 まこと
暮れなづむ首夏の棚田の水鏡 藤子
苗物に落ちつかぬ空夏始め 稔
初夏の川の飛び石きらめけり 敏子
初夏や光る君らと再会す 秀穂
初夏や公園ピアノ軽やかに 靖子
初夏の浜を踏む音水の音 靜風
首夏の風津軽の海をを越えて 泰山
しまなみの白き大橋初夏の潮 翠
初夏や埋め立て済みし田の広し 紀久子
雀どち枝から枝へ初夏に入る 祐枝女
初夏といふ明るき響き一歩前 悦子
坂登る子等の銀輪夏はじめ 洋子
キッチンカー並ぶ初夏多摩河原 啓子
初夏やたてがみ揺るる都井岬 郁夫
蔵町の疎水の光夏はじめ 信義
初夏の光の中の大瓦 文夫
駅員と交わす挨拶夏はじめ 博光
初夏や継ぐ子の鍬に名をきざむ みどり
水晶の耳輪に替える夏初め 美代子
早朝の木木のさ揺れや夏初め 鈴子
二両目の立ち位置に慣れ夏はじめ 歌蓮
初夏の昼餉は庭と妻の決め 選者
やまびこ(六月号の作品から)感銘・共鳴ー私の好きね一句
菜の花やここで生まれた風を聴く 晶子
薄紙を解けば雛の笑みこぼる 朋子
その中に男が一人針供養 勝彦
飛石や寒さが足にまとひつく 胡蝶
種子といふ命のかたち春を待つ 泰山
百年後我が子無き世鳥雲に 海男
逆立てておくマヨネーズ鳥雲に 布美子
祝米寿一人暮らしの桃の花 捨弘
この道は選んだ道よ冬すみれ 爽恵
爪立てて画鋲引き抜く多喜二の忌 裕美
俳誌嵯峨野 八月号(通巻637号)より