せせらぎ(下鴨神社) 8F 寺西千賀子
夏の夕
ふるさとの山へ草矢を打つ八十路 惟之
猿が出た知らせを回す夏の夕
蝉鳴くや透明な羽ふるはせて
サイレンの鳴り渡る明け秋暑し
参道にここよここよと茸群る
誌上句会 兼題「秋祭」
特選
とりどりの野菜のオブジエ秋祭 洋子
村捨ててゆけぬ顔ぶれ秋祭 廣平
秋祭鳰が仏の水を飲む みどり
高張の提灯鋏の秋祭 博光
家家に火の入り早し秋祭 秀子
秀作
御座船の行く瀬田川や秋祭 惟之
谺sする峡の日和や在祭 藤子
教会の小さき中庭秋祭 京子
兵児帯の跳ねる土橋や秋祭 洋子
裃を衣文掛より秋祭 胡蝶
田園の忍者の里や秋祭 三郎
お神酒所に見馴し下戸も秋祭 珠子
父と娘と神輿を肩に秋祭 咲久子
ふるさとの深き絆や秋祭 博女
御神酒所に靴屋も詰める秋祭 まこと
多摩に住み六十年や秋祭 翠
少女らの見慣れぬ化粧秋祭 知恵子
秋祭り幼馴染みを遠目にし 歌蓮
御神輿は五六年生秋祭 秀穂
亡き夫の笛の音色や秋祭 篤子
一族の団欒の夜や秋祭 陽子
コロナ禍に夜店一軒秋祭 祐枝女
秋祭り亡母が口伝の秋祭 靖子
献灯に亡き父の名や秋祭 三枝子
勇壮に獅子のたてがみ秋祭 美智子
やまびこ(十月号の作品から)感銘・共鳴ー私の好きな一句
合歓の花優しい人になりにゆく 洋子
吊橋を引つぱつてをり蜘蛛の糸 爽見
日盛りをおろおろ賢治にはなれず 東音
明け易しこの世に長居して飽きず 隆を
紫陽花や話ふくらむ友寄りて 靖子
薪能火色に鬼の照らさるる 優江
菩提樹の花に弱音をしまいをり 東音
夫看取る多忙中閑の春の月 千恵子
憂き事を遥か彼方へ髪洗ふ 千恵子
免許返上ハーレーは夏の夢 憲勝oか
六月や魔文仁の丘に鉄の雨 ともはる
なめくじにヒマラヤの塩ひとつまみ 布美子
さよならと言えずほおばる青りんご 幸江
白靴やこの健康のいくつまで 史子
魂は天にあづけて昼寝かな 柾子
俳誌嵯峨野 十二月号(通巻第617号)より