ふれあい牧場(岐阜県中津川)6F 水彩
宿木
春風や鳶と鴉の空中戦 惟之
貴船路の桜蕊ふる峠かな
ウクライナ語の四月開講人気呼ぶ
鳥の巣のごとき宿木夏はじめ
賑わひの田植体験子ら列
誌上句会 兼題「滝」
特選
氷河より流れ来る滝殩殩と 胡蝶
雲の峰国を境のナイアガラ 知恵子
夫婦滝落ちてひとつの水となる 篤子
争いの地球の涙滝ごうごうと 翠
滝落ちて阿蘇外輪はけふも雨 文夫
秀作
滝音を頼りに沢を登りけり 洋子
船に見る晒一条那智の滝 珠子
アフターヌーンティ滝の風くるテラス席 恵子
糸滝の一糸の乱れなく落つる 三枝子
歩荷行く木道迫る滝の音 洋子
木木の間を流る滝や最上川 靜風
滝飛沫かかる巌の明王像 啓子
渓流にそそぐ小滝の清かなり 美代子
身びるひの観滝台や四度の滝 陽子
山割つ龍神のの滝しぶきけり 信義
大滝や檜林にこだまして 由紀子
鎮もれる菩提の滝の仏旗かな 惟之
和紙の白残し水墨滝しぶき 稔
滝しぶき浴び轟音のナイアガラ 咲久子
瀧見茶屋あまたの客の旅話 みどり
真つ白に滝をまとうて滝躍る まこと
鎮めんと一条光る神の滝 藤子
横風にしぶき騒立つ女滝かな 秀輔
音変へて河津七つの滝落ちる 和男
入選
尼ひとり打たるる滝や手を合はす 秀子
身のけがれ流す大滝風呼んで 博女
音高く黒部の滝の玉すだれ ともはる
滝に来て見えざる力貰ひたる 廣平
滝の音間遠に聞いてゆく山路 靖子
飛沫より生まれし虹消ゆ滝の風 美智子
池落つる小さき滝の清きかな 敏子
湧き水の集まり滝の生まれけり 万智子
轟音の流れは速し滝壺に 祐枝女
滝の水落ちて流れのゆるやかに 和子
大岩に砕ける滝やしぶきあげ 加代子
天上より一条真理の滝の音 洋子
夜半の雨滝太らせて落にけり 泰山
七色の滝のしぶきや諸手あげ 須美子
人の去る石走る滝森の黙 治子
選者
林道に風湧き滝の匂ひかな 東音
やまびこ(七月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句
水紋は風のあしあと春の池 布美子
タクシーの隠れて休む花の昼 仙命
大樹の枝雲もろともに剪定す 珠子
悟りには遠きわが身や春愁 杏花
残雪の比良を仰ぎて旅をはる 優江
もの思ふまじと畑打つ日もあらむ 勝彦
影が来て指来て土筆摘まれけり 勝彦
桜餅買ふ亡き妻の誕生日 爽見
春光の泣く子笑ふ子ひと包み 爽見
春雨やおどけて手術前の夫 洋子
あれほどが煮ればこれだけふきのたう 隆を
甲斐の峯一糸乱れぬ帰雁かな 怜
一対といふぬくもりに雛の間 篤子
一すじの道を岬へ黄水仙 祐枝女
肩叩き上手になつて卒園す 恵子
三月の光ゆたかに真砂女句碑 和男
親戚の子のごとく来て蕪 智子
目覚めよと春田を進む耕運機 桂子
雛あられ旅行かばんにそつと詰め 敬子
人生に句読点あり雪柳 晶子
俳誌嵯峨野 九月号通巻第614号)より