明智越(京都・亀岡) 40号
御車返し
山上に御車返しなる桜 惟之
散る花の一片おほきひらひらと
不動寺に花の絨毯薄明り
鶯の四方に啼きをり遠比叡
新緑のトンネル抜けて山下る
誌上句会 兼題「青田」
特選
窓四方開けて青田の風に棲む 三枝子
かぎろひの里の朝風青田風 洋子
そよぎ立つ色に力や青田風 みどり
学校田に学年の旗青田風 恵子
十勝野を統ぶるうねりや青田風 泰山
秀作
青田風受けて農具の泥洗う まこと
旅なかば青田の中の無人駅 文夫
近江路や湖東三山青田中 捨弘
青田見ゆ写経の硯洗ふとき 稔
媼ゆく青田の風に押されつつ 秀子
青田風古きよきもの大世帯 珠子
一枝と見紛ふ青田川向う 詔義
賑やかに青田は子らのビオトープ 清次
青田風遠く列なす小学生 靜風
歓声の子ら水遊び青田風 惟之
やまびこ(七月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句
伊予和紙の細き罫線春の雨 そよ女
ごろりごろり蓮華畑に転びたし 志津
老い母の守り来し畦蕗の薹 東音
卒寿にて解ることあり梅の花 和子
このままの人生もよし草萌ゆる 道子
引鶴や出羽三山の晴れわたり 怜
猫の耳かすかに動き春炬燵 みどり
白木蓮咲くにためらひありにけり 豊子
みほとけのみほとりつつむ余寒かな 邦弘
啓蟄や居心地のよい地下茶房 アイ子
花大根休みやすみの鍬の音 安惠
春風やビルの谷間の佃煮屋 眞喜子
俳誌嵯峨野 九月号(通巻第602号)より