萩むら
萩むらに隠れて古寺の白秋碑 惟之
轆轤ひく木地師の里や蕎麦の花
柳生への小道を照らす月今宵
鹿の名を呼びし土産屋東大寺
雁渡るかるがね地蔵の空高く
誌上句会 兼題「秋深し」
特選5句
秋深し日向を継いで歩きけり 秀子
山寺の不滅の法灯秋深し 博女
さりげなくお洒落なベレー秋深し 陽子
仰ぎ見る星の曼荼羅秋深し 胡蝶
山の端の雀色時秋深し 恵子
秀作20句
デニム地の藍の香りや秋深し 京子
京の護符貼る酒蔵や秋深し 惟之
秋深む夕べの皿の色を替え みどり
秋深し馴染まぬままのデジタル化 珠子
突堤を叩く怒涛や秋深む 基雲
人気なき渚のしらべ秋深し 靖子
宿下駄のころんと音し秋深し 篤子
旅一日小さき駅も秋深し 静風
認める長き便りや秋深し 捨弘
秋闌くるかさね五色のウインドウ 啓子
老画家の小さき個展秋深し まこと
螺子回す昭和の時計秋深し 洋子
麒麟草丈低きまま秋深し つとむ
米を磨ぐ音のとどくも秋深し 稔
快方に向く医者通ひ秋深し 祐枝女
武蔵野のお鷹の道や秋深し 山女魚
花の鉢仕舞ふ日和や秋深し 葵堂
秋深しノートに残る夫の文字 三枝子
秋深し雲脚早き牛尾山 テル
秋深しコロナウイルスなお深し 保子
やまびこ(十一号作品から)感銘・共鳴ー私の好きな一句から
リスト行く新緑の山広げつつ 篤子
寅さんのゐさうな旅の夜店かな 恵子
風蘭の風に吹かれてゐたき庭 靖子
老いの道に合わぬと戻る道をしえ きぬ
巴里祭両手にあまる花を買ふ 爽見
掛け算の水嵩となる梅雨出水 素岳
星祭ちちに習ひし紙縒よる 勢津子
風鈴や猫はのそりと動き出す 久子
たかいたかい虹より高く児の笑顔 方城
藤蔓や虚空を探る拠 ともはる
晩年の一歩重たし額の花 千代
窓の風団扇の風とすれ違う 梨々子
梅雨最中残る記憶の夏の海 智子
夜濯やふと子育ての日にかへり 鈴枝
亡き夫のまだ捨てきれぬ登山靴 和江
海の香の髪きしきしと洗ひけり 美幸
梅雨じめり猫丁寧に毛繕ひ 照子
俳誌 嵯峨野 一月号(通巻594号)より