晩秋の大宮川(日吉大社・大津市) F8 水彩
十王図
夕夏至やゆるりと沈む部分食 惟之
一里塚榎たかだか梅雨青し
荒梅雨や死者を裁きぬ十王図
ダリア咲く閻魔の御座す十王寺
七夕やコロナの収束祈りし子
誌上句会 兼題「秋の水」
特選
大江戸へ通船堀や秋の水 章代
禊ぐ術あらばゆだねむ秋の水 千代
豊秋の水煌めきて村に入る 一江
吉と出る水占いや秋の水 三枝子
一村の沈むダム湖や秋の水 京子
秀句
新しき杓整ふや秋の水 保子
一掬い糺すの森の秋の水 胡蝶
下山後の手足の弛び水の秋 咲久子
秋の水おきなおうなの映る影 靜風
川のぼる魚影透かし秋の水 由紀子
日本橋よりのクルーズ秋の水 鈴子
小流れに沿う家並みや秋の水 山女魚
草蔭に鯉のゆらりと秋の水 朋子
茅葺きの美山の里や水の秋 惟之
渡良瀬の昼を静かに秋の水 和男
嵯峨野路の奥の深さや秋の水 富治
木の間より鳥の出入りや秋の水 和己
千年杉根方の濡らす秋の水 洋子
秋水や出来映えのよき墨流し 珠子
尋ねては富士山麓の秋の水 詔義
羽繕ふ朱の水掻きや秋の水 啓子
剣豪の詰め寄る間合ひ秋の水 円町
霊山の裾の急流秋の水 恵子
コロナ禍や秋水盆に返らざる 喜志子
やまびこ(九月の作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句
布施かとも鉄鉢に受く花吹雪 恵弘
母の日や省みる日は多多あれど 龍策
春風を手のひらで押す太極拳 邦弘
夕映えのとどまる里や麦の秋 戀
雲をぬぐ立夏の山のまぶしかり 戀
見慣れたる山のふくらむ端午かな 梅子
マスクして心の見えぬ擦れ違ひ 博女
花万朶運に任せて生きてきて 隆を
医を称ふ拍手連帯青き踏む 怜
田水張り風を泳がす水面かな 研二
丸くなる我の背を押す青田風 喜美恵
昇り藤の花がそよげば夕御飯 和子
御文庫に耀変茶椀清和かな 弘子
蒲公英や使う目途なき大鞄 美樹
尺蠖のぴんと張りたる気骨かな 敏子
俳誌 嵯峨野 十一号(第592号)より