日吉大社の大絵馬
秋暁
夜泣の児あやし月夜の一回り 惟之
蟷螂と閨に一夜を過ごすなり
オムライス二人で分ける敬老日
秋暁や網打つ人は未だ見えず
山霧は一村包み法螺響く
誌上句会 兼題「新米」または「落鮎」
落鮎の一片となる流れかな 三枝子
弥白き多摩川の瀬や下り鮎 まこと
元気よく梁の落鮎跳ねてをり 紀久子
暁の光にすすぐ今年米 洋子
鮎落ちて護岸工事の始まれり 裕枝女
落鮎の下る川瀬の日の鈍し 秀子
秋田小町てふ新米を求めけり 稔
錆鮎の色や姿は無常とも よう子
新米の三十キロやおすそわけ 利己
新米のお粥ふつふつ香り立つ 惟之
落鮎の河口まで来て果にけり 研二
被災地に湯気たててみよ今年米 珠子
落鮎の流されてゆく被災の地 博女
落鮎の瀬音しづかな峡の川 靖子
新米のにぎり飯食ぶ十五歳 初枝
新米やまともに湯気を顔に受け 繁子
新米や越後魚沼産名乗り 捨弘
新米や舌にほどける味がして 美枝
新米のぴんと立たる行儀よさ 奏行
新米に一筋付きし薄みどり 千代
新米やどこより早し高知産 誠子
八品種の田んぼアートや新米に 秀穂
新米を入れし俵のくびれかな 敏子
新米のむすびで締めるクラス会 葵堂
避難して分け合う新米塩むすび 啓子
新米たくぎらぎらひかり五光かな テル
山積の新米どんと蔵の中 里子
四万十川の風や落鮎焼き上がり ひさ子
やまびこ(十一月号作品から)感動・共鳴ーー私の好きな一句
返納ぞもう八十ぞ髪洗ふ 秀子
白シャツの少年一人葬の列 怜
源流に滴りといふ力かな 篤子
亡き人の齢数へる夕端居 勢津子
絹糸の絡まり解けず梅雨に入る そよ女
さくらんぼ会津訛りのやさしくて 優江
蜻蛉生れ池の光を漂へり 勝彦
身のどこか風吹き抜ける祭あと 梅子
茄子焼くや心ときめくことも無く 梅子
汗の子を丸洗ひして夕支度 清次
帰省子にカレーライスと井戸の水 梨里子
病む人の手を握りしめ梅雨長し 敬子
心太無為と無欲に蜜をかけ 慶子
大木を真っ逆さまに蟻下り 裕司
茄子の花いくつになれど子を諭し きみ
星涼し母と揃ひの帯しめて 鈴枝
本当と嘘の行き交ふ団扇風 利里子
俳誌 嵯峨野 一月号(通巻582号)より