山田港(草津市山田)
行々子
鱧の骨読経の如く切り進む 惟之
二輪漕ぐ湖辺の街道行々子
夏めきて笛吹きケトルのドミソかな
頂の新じゃが甘く蒸かし立て
葉面に虎視眈眈と子蟷螂
誌上句会 兼題「花火」または「汗」
手に汗を払ひ一票投じけり 三枝子
花火果て港にもどる灯のあまた よう子
首筋のガーゼ優しく汗を拭く 洋子
三時間かけて来たりし湖花火 捨弘
汗拭きて風のネクタイ外しけり まこと
草を抜く滴る汗を拭きながら 由紀子
背の山の大きくなりぬ遠花火 みどり
額よりぽとぽと落ちる玉の汗 テル
彫刻に時忘れゐし玉の汗 博女
二本ほど背高杉や遠花火 たかすけ
さまざまな汗の語らふ風呂屋かな 研二
人の波夜風ふるはす大花火 杏花
小買物涙の如く汗つたふ 初枝
手花火や小さき闇に炎ゆれ 静風
美しき球児の汗や甲子園 靖子
汗ぬぐい白き歯見せて勝ち投手 恵子
溢れ出る汗に術なし影もなし 美枝
汗ほとり汗しとり汗ねとり汗 奏行
遠花火赤く煙れる向かう山 誠子
どよめきに続き拍手や大花火 惟之
大花火終り落ち着く川の音 千代
ひと休み汗ばむ頸の脈探す 啓子
一心に針を畳に眉の汗 秀穂
思い出を残し煙となる花火 秀子
切なきは星降る里の遠花火 京子
やまびこ(九月号作品から) 感銘・共鳴ーー私のすきな一句
みちのくの訛りにほどく笹粽 東音
今日の無事明日もと願ふ新茶かな 龍策
母の日も末座に座せる妻なりき 勝彦
庵治石を割る音海へ初夏の風 ひさ子
年号の変はりし空の鯉幟 淳子
戦無き平成終の昭和の日 龍策
ありなしの風にそよぎし鳴子百合 恭子
分校の児も子雀も島育ち 素岳
風薫る絵本の頁むくる度 久子
陽炎の中に入れば皆孤独 方城
白牡丹花芯に仏おはすかに 真生子
ハイテクに音痴で老いて山笑ふ 和江
思ひ出のゆっくり開く桜漬 睦美
語尾まろき美作ことば茄子の花 耕
車椅子に疲れころがる夏布団 邦子
子の息の七色に滿つしやぼん玉 美幸
俳誌 嵯峨野 十一月号(通巻580号)より