由布岳の夏(2011年8月)
春の鴨
いぬふぐり牧場にそよぎ山羊の声 惟之
春の鴨よけて石投げ湖平ら
つちふるや東に比叡西愛宕
岸壁の割れ目一輪すみれ咲く
焼き立てのパンのお出まし春日向
誌上句会 兼題「風薫る」
風薫る心の弾み筆までも 純代
母校に立つ新米教師風薫る 秀子
薫風に杖のリズムを調へり 敬子
艇担ぐ太き二の腕風薫る 惟之
ブラウスの君いそぎ来や風薫る 泰行
大川へ漕ぎだす艇や風薫る 捨弘
風薫る牧場の果ては海に入る 篤子
道産子も草食む大地風薫る 基雲
気に入りの服の繕い風薫る 孝子
堀りあげし菩薩の頬や風薫る 博女
風薫る開きし本の押し花に 啓子
薫風や島指す船の白き澪 仙命
海難碑みな海へ向き風薫る 三枝子
凱旋門の道はローマへ風薫る 咲久子
薫風の塔の天辺ひとまはり 球子
三番瀬の高きしぶきや風薫る 詔義
風薫る杖つく夫へ歩をあわせ 静風
校庭の花壇ボランテイア風薫る テル
薫風や白壁清き美観地区 一江
復元の本丸御殿風薫る 保子
九品仏境内広し風薫る 万智子
薫風を分け合い母と散歩道 睦美
キャンパスの農作物や風薫る 佑枝女
乳歯噴くぷつぷの息吹き風薫る 和己
薫風にハモる親子のわらべ歌 直子
やまびこ(六月号の作品から)感銘・共鳴ー私の好きな一句
椅子深く坐りて春を待ちゐたり 志津子
我に過去孫に未来や冬木の芽 素岳
花よりも幹うつくしき梅古木 鈴子
ゼリー塗り終えて余寒の心電図 恵子
平凡な孤独もありぬ春炬燵 和江
パソコンもスマホも苦手毛糸編む 篤子
花あんず母恋しやと母の言ふ 幸江
森出づる春水に歩を合わせけり 東音
残雪の林道富士へ曲がりけり 東音
現生の余生の余白梅真白 爽見
秒針のこちこち積もる春の雪 勢津子
最終のおこぼれもらふはやり風邪 博女
着ぐるみのだるま整列チュウリップ 京子
冴返る竹百幹の風の音 一江
待つよりも一駅歩み寒日和 保子
梅二月わが頬撫でて母逝きぬ 弘子
俳誌 嵯峨野 八月号(通巻565号)より