睡蓮池(大津市大萱) F6 水彩
雪の女王
クリスマス王雪の女見にゆく子 惟之
冬天や猿飛佐助ゐた城址
冬晴や弘法杉の幹太し
街道に火の見櫓や遠伊吹
夜叉ヶ池照らしてをりぬ冬の月
兼題(雑炊)
特選
雑炊を炊く土鍋のひび古し 廣平
雑炊をカフェーで啜る日曜日 幹男
雑炊に溶かして啜るわだかまり ふみ女
秀作
世の隅に座り直して蟹雑炊 三枝子
一人身の朝昼晩のおじやかな 佑枝女
しあわせや両手に包む蟹雑炊 藤子
直箸の文化交流ふぐ雑炊 光央
妻ありて蟹雑炊のありがたし 泰山
雑炊やつつがなきをかみしめて 靖子
入選
病み上がり雑炊の味ためしつつ 博女
亡き友と語りし夜の締め雑炊 謙治
雑炊のひと匙づつを病む母へ 洋子
雑炊を囲む家族や外は雨 秀子
無事下りて仲間と囲む河豚雑炊 惟之
雑炊や夜回りの声彼方より 治子
雑炊の味に深みを残り野菜 万智子
年始めとて締めの雑炊うつくしく 稔
雑炊の出汁に畑へも笑顔かな 文夫
女子会のお開きそそと雑炊に 洋子
雑炊を吹いて猫舌まつろはす 秀穂
雑炊の椀あたたかき夕餉かな 翠
敗戦の雑炊を思ふ母の味 靜風
芋雑炊田舎銀座の里恋し 珠子
到来の具は大粒や牡蠣雑炊 知恵子
雑炊のふうふう吹いて過去しのぶ 喜美江
早朝の雑炊匂ふ亡き母の味 みどり
雑炊や誠実なまま生きてをり 紀久子
雑炊に昔語りのはじまりぬ 博光
おじや噛む乗せる三つ葉を好む夫 啓子
指白き女将の手際う雑炊 鈴子
卵黄を二つ落として締め雑炊 信義
円卓のこころ豊かに牡蠣雑炊 美代子
雑炊や万の神を祀る祖父 三郎
雑炊につまる感慨山のごと つとむ
やまびこ(二月号作品から)感銘・共鳴ー私の好きな一句
思い出に始まる母と子の夜長 鈴枝
表札に夫の筆あと秋深し 梅子
父母こゆる齢いただき今日の月 郁子
しなひつつ光をこぼす竹の春 爽見
ふり向けばまうしろに立つ秋の影 爽見
蓮の実の跳んで捨てたき過去のあり 三枝子
追伸に本音のありき秋の虹 怜
叱られた子供待ってる犬と月 方城
かえりみてこんなに生きて枯野人 憲勝
立話入れていれてと秋の蝶 布美子
川音は闇に吸われてちちろ虫 山女魚
烏瓜夫からもらひ生ける朝 文香
手に包む津軽のひかり林檎剥く ひさ女
行く雲や山家の軒に干し大根 克己
俳誌嵯峨野 四月号(通巻633号)より