弘誓寺の蜜柑かがやきはじめたり(東近江)水彩6F
鳥 兜
鮒ずしや北湖南湖を食べ比ぶ 惟之
吾子泣ひて尾のなき守宮放しけり
盆三日帰れぬ子等と絵を交はす
稲光湖を平らに走りけり
鳥兜ひつそり郡れし比良比叡
誌上句会 兼題「秋夕焼」
特選
秋夕焼映す川面や風立ちぬ 保子
山上に祀らるる舟秋夕焼 惟之
一仕事終へて珈琲秋夕焼 円町
山山の渓の深さよ秋夕焼 みどり
すり抜けるスケボーの子や秋夕焼 佳子
秀作
鐘の音の海に出てゆく秋夕焼 京子
秋夕焼大河の蛇行浮き立たせ 章代
望洋の高台に酌み秋夕焼 稔
トロムソを水平移動秋夕焼 胡蝶
海に沿ふ秋夕焼の五能線 和男
日照雨過ぐ秋夕焼の嵯峨野かな 美智子
秋夕焼クラブ帰りの子らのこゑ 靖子
久に見る秋夕焼の鳰の湖 静風
秋夕焼真つ只中に漁る 三枝子
犬吠の波のパノラマ秋夕焼 陽子
ラクビ―のゴールホストや秋夕焼 恵子
鳥羽の海の船の行く手や秋夕焼 須磨子
清閑な鍵屋の辻や秋夕焼 敏子
秋夕焼子らの約束またあした まこと
古里に弟ひとり秋夕焼 富治
秋夕焼天空映える高野山 珠子
パスポート白きままなり秋夕焼 秀穂
秋夕焼戦艦大和の如き雲 詔義
黒雲は火を噴くゴジラ秋夕焼 啓子
アンコールの仏塔浄土秋夕焼 咲久子
やまびこ(十月号作品から)感銘・共鳴ーー私の好きな一句
花栗の濡るるともなく月に濡れ 清次
若葉風寐てゐる部屋を通りけり 志津
母の日や千人針の遠き日を 爽見
十薬の一揆めく香のありにけり 爽見
衣替へてどこにも行かぬ日の続き 和子
口端にものらず父の日暮れにけり 素岳
ふと香る少年の髪夏の雨 久美子
久久の車窓青葉の迫りけり 東音
老ひてなほ夢を追ひたし茄子の花 きぬ
草笛を吹いて歳月呼び戻す 素岳
青嵐一過里山裏返る 圧知
はつなつの百葉箱の白きかな 怜
心の荷一つづつ解く更衣 近子
噴水に恋の告白さらはれる 布美子
遠慮なき母子二人の午睡かな 彩子
風薫る心に寒くチェロを聞く 英二
俳誌 嵯峨野 十二月号(通巻593号)より