睡蓮 F40号 水彩
初富士
初声は孤高の鳶や遠比叡 惟之
初富士へあはあはあはと稚児の指呼
似顏絵の並ぶ羽子板あにいもと
裏山へ仲間と愛づる初日の出
刻刻と初日のぼりて黄金満つ
誌上句会 兼題「薄氷」
薄氷の薄氷を押す小川かな 基雲
薄氷の草を残して庭を掃く 敬子
はらからの病みても長寿薄氷 喜志子
薄氷を砕きて空を砕くかな 研二
薄氷やまだ定まらぬ山の色 静子
薄氷や十国峠の晴れて富士 弘子
動き初む薄氷朝の日を返し 篤子
薄氷や学舎よりの早春賦 靖子
薄氷を踏みつ快癒のしらせ待つ 博女
藁しべを掴みてをりぬ薄氷 三枝子
齢重ね来し道見れば薄氷 詔義
きのう解け今朝また光る薄氷 隆子
薄氷の水泡うごく峰おろし 洋子
順番に薄氷踏んで児が通る 万智子
薄氷を透かし小石の動きけり 里子
薄氷を踏めば銀色立ち上がる 奈緒世
薄氷に乗る一葉や毘沙門堂 初枝
薄氷の岸辺をくぐる沢の音 珠子
薄氷の踏み産土の宮参り 幹男
日の差して切子のやうな薄氷 惟之
薄氷の田に注ぐ日のやわらかし 近子
薄氷に遊び心をくすぐらる 一江
薄氷や絵馬打ち鳴らす風の出て 保子
池に張る薄氷家の寒暖計 弘子
薄氷を突くや花たち目覚めよと 洋子
やまびこ 三月号作品から 感銘・共鳴ー私の好きな一句
冬立つや聞かぬふりする猫の耳 喜志子
飛び石は女の歩巾もみじ散る 勢津子
水音を聞かむと橅にもたれ秋 優江
いのちなほつづくと思ひ日記買ふ 恵弘
風鶏忌近し小雨の深大寺 東音
野菊摘む指に残りし陽のにほひ きぬ
一族は祖母に従ひ七五三 勝彦
蓋取れば山の風くる零余子飯 ひさ子
晩学に燃ゆるものなほ残る虫 篤子
茶柱を噛めば行く秋ほろ苦し 方城
冬紅葉夫に似し子と眺めをり 鈴子
捨て去りて新たなる冬迎へけり 豊子
秋収夕日を拝す老夫婦 秀子
銀杏散る空が剥がれて銀杏散る 勇美子
俳誌 嵯峨野 五月号(通巻562号)より